ボーダーラインと携帯小説の世界

精神病患者達と携帯小説が好きな人とアニメ類が好きだったり、料理好き用

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翼 16

「ああ、ごめんなさい。落ち着いてって言いたいところだけど、しっかり優先順位が定まってるわね」
 半ば呆れ顔で説明した。秀樹の部屋に入ったときに、秀樹が倒れ病院に収容されたこと、あれから一日半ほど経ったこと、休養のためにしばらく出社は出来ないこと。
 秀樹は天井を見上げた。記念すべき栄転の日を先送りにしなければいけないことは何よりこたえた。
「せっかく栄転が決まったのに、なんて顔しないの。ゆっくり休みなさい」
 秀樹はまるで心を読まれた気がして由美の顔をまじまじと見た。
「いくらあれから三十年近くが経ったとしても、ずっと見てきたんだからそのくらい分かるわよ。完璧主義者で合理的、プライドが高く、命より面子を気にする人。経営者の鏡よねぇ」
 皮肉をこめたような台詞は、しかしまったく嫌味を感じさせなかった。
「しばらくって、どのくらいなんだ。いつになったら退院できる」
「検査しないとわからないそうよ」
 そう言った由美の表情は陰りがあった。
「正直なところどうなんだ」
 今度は由美が驚く番だった。
「俺も少しは覚えてる。嘘は嫌いだっただろう。単純バカは年をとっても治らないようだな」
「年寄りで悪かったわね。あなたも同い年でしょ。大体、単純バカは余計です」
 そうだったな。と言うと、お互いに顔を見合わせて笑った。ずいぶん久しぶりに笑った気がした。
「結局部下はあれから来てないんだろう。差し入れらしきものもないし。つまり、もう社にとっては用済みなわけだ」
 改めて口にすると、突然訪れた理不尽に唇を噛んだ。
「もう、社会復帰は出来ないのだろう」
 あたったところで仕方がない。わかってはいたが何とか言わなくては気がすまなかった。
「きっと治るから。自分を追い詰めないで……」
 嘘でも否定して欲しかった。しかし、その一言で絶望的なんだと秀樹は悟った。
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  1. 2009/05/10(日) 00:19:25|
  2. 携帯小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

さやうま さんへ

読んでくれてありがとうございます♪

>何も栄転の日に…なんて皮肉なー。
だからこそ、決めなければならないことってありますよね。
身辺整理。をマメにやる人なのかも。(かもって……
  1. 2009/05/10(日) 10:39:04 |
  2. URL |
  3. たけ #-
  4. [ 編集 ]

ああ。

秀樹さんはナンの病気なのかしら…。
何も栄転の日に…なんて皮肉なー。
  1. 2009/05/10(日) 09:51:10 |
  2. URL |
  3. さやうま #qZjO.u1.
  4. [ 編集 ]

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