ボーダーラインと携帯小説の世界

精神病患者達と携帯小説が好きな人とアニメ類が好きだったり、料理好き用

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父と精神病の娘と結婚と17

「いやはや、失礼、失礼。不思議と口が動いてしまう。あなた方には、自然に本心を言わせる力がある」

老人は、低い雲におおられた空を見上げる。
「自然を名前に関連させるという私の父の意志の結果、平蔵なのです。平原(へいげん)ってわけですな」

洋介は、誉められて悪い気がしない。ついつい、話に乗る。
「実は、彼女も自然の名前です。中川百合子。あれ? ということは……」いよいよ、話は深刻になる。
百合子は、唇を震わせる。
「私の父の名は、中川平蔵なんです」
今度は、老人がひっくり返る。
「なんと! いやはや、因果(いんが)とは恐ろしい」

そして、百合子達はこれから父の面会に行くと伝える。
老人は、「ならば、ちと老人のワガママを聞いてくださいますかのう……」と、図々しい割には逆に小さく背を丸める。
そんな老人に同情し、二人はアイコンタクトで互いに承諾の意志を伝え、老人に「もちろんです」と言う。
そういえば、と百合子は思い出す。
(いつだったか、薬という名のホルマリンに浸かっていた頃、「私はなんの役にもたたず、税金に頼って生かせてもらって申し訳ない。死にたい……」と泣いていた中年女性の肩を洋介が抱き、一緒に泣いてたっけ……)と。
(やっぱり洋介はすごいなぁ……。でも、ご老人はあなた”方”と言ったのだから、私も徳が身についてきたのかな? 洋介と論語のおかげだなぁ……)

自分以外の人が誉められて喜ぶ。百合子には珍しい体験で、感動した。
珍しいから感動したのではなく、大切な人や敬愛する人が誉められることのなんと喜ばしいことか。

人の心はとうに捨てたと思っていた百合子の心に、小さく可愛らしい花が咲いた。
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  1. 2009/09/14(月) 07:49:14|
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